伸寿記念クリニック(仮)

高尿酸血症(痛風)

風に当たるだけでも痛い痛風という病気をご存知でしょうか?

典型的には特段ぶつけてもいないのに足の親指の付け根が赤く腫れて歩けないほどズキズキ痛むという症状が出る病気として知られています。

ここではその痛風の原因となる尿酸についてわかりやすく解説し、高尿酸血症を予防するための方法と、万が一痛風の発作が出てしまった際の対処法について順を追って説明していきます。

最後には偽痛風という似た名前の病気についても紹介してみようと思います。

尿酸について

尿酸とは「プリン体」が体内で分解されてできる最終産物です

さて、そもそも「尿酸」ってなんでしょう?

尿酸という名前は、この物質がもともと尿の中から発見されたことに由来します。

我々の体は元を辿ればたった一個の細胞から生まれており、その細胞がタイミングよく増えることでヒトの体を形作っています。

すべての細胞にはそのヒト固有の情報が刻まれているのですが、それを遺伝情報と呼びます。

その遺伝情報をコードしている物質にはDNAやRNAが知られており、総称して核酸と呼ばれます。

核酸にはプリンという物質が含まれており、プリンを含む物質をプリン体と呼びます。

これらが代謝されて生じる最終産物が尿酸なのです。

我々の体は常に古い細胞を壊して新しい細胞に置き換えるという新陳代謝を全身で行っているのですが、細胞が壊れたときには同時にその細胞に含まれていたDNA、RNAが分解されて尿酸が生じ、腎臓から尿中に排泄されます。

つまり、尿酸とは我々の活動にあわせて日々当たり前のように産み出されている生体物質の一つなのです。

体内の尿酸量は通常いつも同じになるようにコントロールされています

プリン体は細胞の中にあるものですから、動物・植物いずれの食品からも体内に入ります。

我々の細胞が元気に活動するために必須の物質ですので、日々の食事から適切に摂取する必要があるのです。

食事中のプリン体は主に肝臓で分解されて尿酸となり、一時的に体内に溜め込まれた後、尿や便として排泄されます。

1日に体内で産生される尿酸はおよそ700mgです。

1日で排泄される量も700mgなので、体内の尿酸は常に一定の量(健康成人男性の場合およそ1,200mg)に保たれており、これを「尿酸プール」と呼びます。

高尿酸血症の状態が続くと尿酸が結晶化して痛風になります

この尿酸という物質は水に溶けるので尿や便に効率よく排泄されるのですが、物事には限界があり、あまりに尿酸が豊富になりすぎてその濃度が高くなりすぎると、結晶として析出してしまいます。

日本でも昔、海水の水分を飛ばして塩を作っていたのと同じ原理で、尿酸も濃度が高くなりすぎると溶けきれなくなって結晶化してしまうのです。

1dL当たりの血液中の尿酸(尿酸値)が溶解限界の7.0mgを超えると少しずつ結晶がいろんなところで出来始めます。

この結晶は先端が鋭利な槍のような形状をしています。

典型的には足の親指の付け根に溜まりやすく、できた結晶の沈着がある程度増えると、赤く腫れて強い痛みを出します。

これが痛風なのです。

尿酸値が高い状態が続くと痛風のほかに、尿路結石や腎不全などの合併症に繋がりますので早めに医療機関を受診した方が良いでしょう。

痛風の治療

痛風に対する治療は発作の緩和と長期的な尿酸値の管理の二本柱で行います

痛風発作が治まって痛みが引いても、関節に尿酸塩結晶がある限り痛風は再発する恐れがあります。

一度痛風を経験したことがある方はお分かりいただけると思いますが、二度と経験したくないような激痛である場合が多いので、急性期の痛みをしっかり取り除いた後は、再発予防に努める必要があります。

運悪く痛風発作が起きてしまった際にはコルヒチンという薬が特効薬として昔からよく使われてきました。

この他に非ステロイド系消炎鎮痛剤を内服や外用で用います。

通常1週間程度かけて痛みは次第に改善します。

その後は再発予防のために尿酸値を6.0mg/dL以下に抑える必要があります。

なぜなら、尿酸の血中濃度を下げないと、関節内に溜まった尿酸塩結晶が再び溶けて無くならないからです。

まずは生活習慣を見直しましょう

高尿酸血症の方は、同時に高血圧や肥満などの生活習慣病も指摘されていることが多いです。

高尿酸血症も生活習慣に密接に関わっていることが多いため、予防にはまず生活習慣を見直しましょう。

具体的には以下のような対策が挙げられます。

  • 水やお茶は1日2リットルを目安にこまめに補給して脱水を予防します。
  • お酒は種類は関係なくほどほどにして、飲酒によるプリン体摂取を抑えます。
  • 1日の摂取カロリーを知り、食べすぎにならないようにすることで、食事からのプリン体摂取を抑えます。特に肉類、レバー・モツなどの内臓、魚卵(アンキモ・イクラ・シラコなど)にはプリン体が豊富に含まれているので、ほどほどを心がけましょう。
  • 適度な運動(ウォーキングやジョギング、ストレッチなど)を心がけましょう。

生活習慣の見直しをした上で、それでは不十分な際には尿酸値をコントロールするお薬を服用します。

先ほど、体内の尿酸量は通常いつも同じになるようにコントロールされていますとお話ししました。

高尿酸血症の患者さんでは、そのバランスが崩れていて、尿酸の素となるプリン体を摂取し過ぎているか、尿酸が過剰に作られすぎているか、尿酸が体外に排出されにくくなっているか、のいずれかが起きてしまっているのです。

そこで、食事内容を見直していただいてプリン体の摂取量を抑えた上で、体内で作られる尿酸をお薬で抑えたり、体外(尿中)に排出される尿酸量を増やすお薬を使用したりして崩れた体内の尿酸量のバランスを元に戻すような治療戦略を取ります。

すでにお薬を処方されて服用されている方であれば、一度どんな機序で効果を出すお薬なのか処方医に確認してみても良いでしょう。

似た名前で紛らわしい「偽痛風」とはなんでしょう?

世の中にはいつの時代にも紛らわしい名前をつけられてわかりづらくなっているものが存在しますが、よく調べてみるとなるほど!と納得できるものも多いですよね。

「ガンモドキ」という豆腐を加工した揚げ物はもちろん雁(がん)の肉ではありませんが、カモ目の鳥類である雁の肉に似せた「もどき料理」です。

痛風にも似た名前の偽痛風という、こちらは歴とした病気があります。

偽痛風では尿酸値の上昇は認められない代わりに、ピロリン酸カルシウムの結晶が関節に沈着し、痛風同様の激烈な痛みがおこります。

痛風が足の親指の付け根を含めた体の中では比較的小さい関節で起こりやすいのとは対照的に、偽痛風では膝関節が最も頻度が高く、その他では肩、足首といった大きな関節のほうが発生しやすいという違いがあるため、痛みの出ている関節の部位から診断を推定することが可能です。

偽痛風には特効薬らしい特効薬が存在しないため、抗炎症薬などをうまく使用しながら痛みのコントロールを目指します。

通常1~3日で軽快しますが、場合によっては貯まった関節液を抜いたり、ステロイドの関節内注入が有効です。

ひどい場合には変形性関節症を引き起こし、関節の変形が進んで歩行障害が進行することもありますが、その際には人工関節置換術などの外科的治療の適応となる場合があります。

日々の生活習慣に気をつけましょう

風に当たるだけでも痛い痛風。

ここではその原因となる尿酸について解説し、高尿酸血症を予防するための方法と、万が一痛風の発作が出てしまった際の対処法について説明してきました。

日々の食生活・運動習慣に気をつけながら、健康増進に努めましょう。

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